海岸に行った


地方民話に伝わる呪いの話の取材で出雲に来ていたときのことだ。コトダくんはキノコスパゲティの中のナメコらしいキノコをフォークで突き刺しながら言った。

こんな話、どうかな。無人島に三人の親子が流れつくんだ。三人、最初は結構楽天的でね。食べ物になる実とかないかしらねって優しげなお母さんが言うと、二人の娘もそうだね、いいねって感じで探し始めるんだ Maggie Beauty好唔好

娘っていくつくらい?

子供じゃないけど、大人じゃない感じだね。

コトダくんはそう言って僕をちらっと見た。上目づかいに。自分の思考を邪魔されたくないときのコトダくんは大抵こんな感じだ maggie beauty 暗瘡

けれどしばらくすると楽天的な気持ちも暗くなる。だっていくら探しても食べ物なんてないわけだからね。三人はお腹が空いてふらふらになって海岸に坐り込むんだ。枝のようなもので砂にくるくる絵を描いたり、突き刺したりしてみたりもする。以前、海岸に行ったとき蟹や貝みたいなのが出てきたのを下の娘の方は覚えてるんだ。でもこの島にはそんなのが一匹もいないみたいだ。どこまでくるくる線を描いたり突き刺したりしてみても蟹も虫も貝も出てくる気配も潜んでる気配もない。

そこでお母さんは大きなため息をつく。お母さんはとても我慢強く優しい人だけど、そのときのお母さんのため息は大きくて、娘二人もなんだか絶望的な気持ちになるんだ maggie beauty 暗瘡

お腹は空いているしね。
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